骨折による後遺症(可動域制限)の慰謝料について
可動域制限とは?
交通事故で骨折やじん帯を損傷してしまうと、器質的変化や神経麻痺などで、今まで通り、関節が曲がらなくなってしまうことがあります。これを可動域制限といいます。このような場合、後遺障害と認定されることで、逸失利益(労働能力が損失したとしてもらえる賠償金)や後遺障害に伴う慰謝料が貰えることになります。
例えば、肩や腕、手首、股関節や膝、足首といった関節に機能障害が生じている場合、怪我をしていない方(健側)と比べて、全く動かない、もしくは1割以下程度しか動かないような場合なら、「用を廃したもの」として後遺障害8級、1/2以下なら、「著しい機能障害」として後遺障害10級3/4以下なら、「機能障害」として後遺障害12級と認定されます。
参考:裁判基準の後遺障害慰謝料※()内は自賠責基準
- 8級の場合…830万円(324万円)
- 10級の場合…550万円(187万円)
- 12級の場合…290万円(93万円)
骨折による後遺症(可動域制限)の後遺障害等級申請について
どうやって申請すればいいの?
関節機能障害(可動域制限)が後遺障害として認められるためには、医学的な原因を画像診断や検査結果で明らかにする必要があります。
医学的な原因としては、大きく2つあります。
- 骨組織や筋肉、じん帯の損傷などにより、器質的変化がある場合
- 神経麻痺がある場合
どの程度可動域に制限が出ているかは、日本整形外科学科及び日本リハビリテーション医学会による「関節可動域表示ならびに測定法」に基づいて、測定することになっています。
具体的には、角度計(1度=1mm)を使って、他動運動(医師が手を添えて動かす運動)で健側(怪我していない方)と患側(怪我した方)との動く角度を比較します。健側が180度、患側が120度しか動かないような場合は、3/4以下に動きが制限されているため、後遺障害12級に該当するということになります。もし、健側が五十肩などで、元々正常値よりも動かないような場合は、その旨を考慮した上で、後遺障害等級申請をする必要があります。
また、関節には主要運動と参考運動があり、主要運動とは、「日常の動作にとって最も重要な動き」で、参考運動は、「日常の動作で主要運動ほど重要ではない動き」と定義づけられています。首であれば、前後に曲げる、首を回すといった運動が主要運動で、参考運動は首を横に曲げるといった運動です。
主要運動が等級認定以下であっても、参考運動により等級が認定されるケースもありますので、主要運動だけで申請するわけではありません。
治療中のご相談をお勧めしています
後遺障害等級の申請をするタイミングや治療過程での可動域の測定が重要になりますので、治療中からのご相談をお勧めしています。
関節機能障害(可動域制限)は、薬によって改善傾向がみられる場合があります。受傷から6カ月程度の段階では、後遺障害等級相当の可動域制限が見られたものの、その数ヶ月後には、可動域制限が軽減し、後遺障害認定が認められないという可能性もあります。
また、後遺障害診断書に障害認定の基準を満たしているにもかかわらず、「非該当」と認定されてしまう場合があります。これは、測定結果の信憑性が認められないことが主な要因と考えられますので、治療経過の中で、何回か可動域の測定をしていることが重要になってくるためです。
可動域制限に関連する傷病名一例
神経麻痺系
- 神経根引き抜き損傷
- 正中・尺骨・撓骨神経麻痺
- 腓骨神経麻痺
- 仙骨神経麻痺
動揺関節系
動揺関節系とは、可動域制限ではなく、関節が不安定となることで、正常な動きをしないことです。
- 肩脱臼
- 前十字・後十字靭帯断裂
後遺障害12級について
骨折やじん帯損傷を理由に、後遺障害が認定される可能性のある、後遺障害12級について一部抜粋してご紹介します。
- 5号:鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
- 6号:1上肢の3大関節(肩、腕、手首)中の1関節の機能に障害を残すもの(可動域制限)
- 7号:1下肢の3大関節(股関節、膝、足首)の1関節の機能に障害を残すもの(可動域制限)
- 8号:長管骨に変形を残すもの
上記認定がされた場合、後遺障害慰謝料として290万円、逸失利益として、労働損失率14%が適用される可能性があります。
可動域制限についてのよくある質問
よくむちうちで痛くて首が回らないという場合がありますが、これは、痛みによって可動が制限されているため、可動域制限として評価されることはありません。可動域制限とは、他覚的に証明されている必要があり、画像検査の結果が重要になります。
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