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交通事故で骨折した場合、慰謝料はいくらになる?

慰謝料の金額や注意点について紹介します
交通事故で骨折した場合、慰謝料はいくらになる?

交通事故で骨折した方に発生する慰謝料には、入通院慰謝料(傷害慰謝料)と後遺障害慰謝料の2種類があります。また、それぞれの慰謝料をどのように算出するかの基準として、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあります。 ここでは、慰謝料の金額や注意点について紹介します。

骨折した場合の入通院慰謝料

自賠責基準では、慰謝料は「1日当たり4300円(2020年3月31日以前に発生した事故の場合は4200円)×対象日数」という式で算出されます。

対象日数というのは、①治療期間(治療開始から治療終了までの期間)の合計日数、②実際に通院した日数(実通院日数)×2のいずれか少ない方を指します。例えば、骨折による治療期間が3か月(=90日間)であり、その間実際に通院した日数が30日であったケースでは、90日>30日×2=60日であるため、対象日数は60日となります。そのため、このケースでは、基本的には4300円×60日=25万8000円という式で慰謝料が算出されます。

ただし、自賠責基準では、賠償される損害額の上限は120万円とされています。これは、慰謝料だけでなく、治療費などの項目も含めての上限です。そのため、例えば、治療費だけで100万円かかった場合には、慰謝料として受け取れる金額は20万円しかなくなってしまいます。なお、自賠責基準の場合は被害者に重大な過失がない限りは考慮されずに済みます。

自賠責基準だけでは適切な賠償がなされないケースでは、任意保険会社が会社独自の基準を用いて自賠責基準を超える賠償をすることがあります。この基準を任意保険基準といいます。任意保険基準は会社ごとに存在し、詳細は公表されていませんが、任意保険会社は、交渉においては原則として自賠責基準を用いて損害額を算出し、自賠責基準ではあまりに低い賠償しかなされないと判断される場合には任意保険基準を用いていると思われます。

さて、ここまでは弁護士が介入していない段階の説明です。
弁護士が介入した場合、弁護士基準を用いて損害額を算出します。弁護士基準を用いる場合、自賠責基準や任意保険基準と比べて損害額が高額になります。入通院慰謝料を算出する弁護士基準には別表Ⅰと別表Ⅱという2種類があります。原則として慰謝料が高額となる別表Ⅰを用いますが、むち打ちや軽い打撲等の場合には例外的に別表Ⅰより低額となる別表Ⅱを用います。

また、弁護士基準では、原則として治療期間をもとに慰謝料を算出しますが、例外的に、治療期間が相当長期にわたる場合には別表Ⅰでは実通院日数の3.5倍程度の日数を、別表Ⅱでは実通院日数の3倍程度の日数をもとに損害額を算出することもあります。
上記ケースでは、骨折しているので別表Ⅰを用います。そして、通院期間が90日であることから、慰謝料の額は73万円となります。この点、骨折の治療期間として相当長期とは評価できませんので、実通院日数ではなく、治療期間を基に慰謝料を算出します。

ただし、弁護士基準を使う場合は、被害者に過失があれば過失相殺がされます。そして、過失相殺は、慰謝料だけでなく、治療費等の他の項目にも影響(減額)します。したがって、弁護士基準を用いて賠償金額が増額するというのは、あくまでも被害者に過失がないか小さいケースに限ります。

骨折した場合の後遺障害慰謝料

交通事故により骨折し、治療をしたものの、後遺障害が残るケースがあります。この場合、入通院慰謝料に加えて、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。後遺障害による損害の算出方法についても自賠責基準と弁護士基準があり、被害者の過失が小さい場合には弁護士基準の方が賠償額が高額となります。

骨折に関連して発生する可能性のある後遺障害としては、代表的には神経障害、機能障害、運動障害、欠損障害、短縮障害、変形障害の6種類ありますので、ここではこれらの後遺障害について紹介します。とりわけ、神経障害と機能障害は、認定数の多い後遺障害となります。

骨折に伴って生じ得る後遺障害の種類は多岐にわたりますので、長期間治療をしても何かしらの症状が残存している場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

神経障害

神経障害は、骨折等の受傷によって、骨折部位に痛み、しびれ、知覚障害等が残ってしまった場合の後遺障害を言います。

「14級9号」に該当する「局部に神経症状を残すもの」については「医学的に説明可能な神経系統又は精神の障害を残す所見があるもの」で、「医学的に証明されないものであっても、受傷時の態様や治療の経過からその訴えが一応説明つくものであり、賠償性神経症や故意に誇張された訴えではないと判断されるもの」が基準になるとされています。

一方、「12級13号」は、残った神経症状が「頑固な」場合で、具体的には他覚的所見があり、自覚症状に適合する治療や症状の経緯がある場合が該当します。労災を準用している自賠責保険の後遺障害等級認定実務では、この「頑固な神経症状」とは、「医学的に証明できる神経症状」で、「レントゲン写真・CT写真・脳波検査・脳血管写・気脳写・筋電図等の検査によって証明される場合」が基準になるとされています。つまり、「12級13号」の認定を得るためには、自覚症状を画像で明らかに説明できるようにしないといけないので、CTやMRIの画像診断といった他覚的所見たる客観的資料が必要になります。

等級内容自賠責基準弁護士基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの94万円290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの32万円110万円

機能障害

機能障害は、骨折等の受傷によって、上下肢の3大関節(上肢は肩、肘、手首の関節、下肢は股、膝、足首の関節)や手足指の関節動作ができなくなったり、関節の動く範囲(可動域)が狭くなった場合の後遺障害をいいます。身体のどの関節の可動域がどの程度狭くなったかにより等級が決まります。また、人工関節や人工骨頭を挿入・置換した場合にも、関節機能障害として後遺障害が認定されます。

動揺関節(関節が安定性を失ってぐらつく状態)や習慣性脱臼(軽い外力で容易に脱臼する状態)についても、関節の機能障害として後遺障害が認定されます。

等級内容任意保険基準弁護士基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの1,150万円2,800万円
1級6号両下肢の用を全廃したもの1,150万円2,800万円
4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの 737万円1,670万円
5級6号1上肢の用を全廃したもの618万円1,400万円
5級7号1下肢の用を全廃したもの618万円1,400万円
6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの512万円1,180万円
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの512万円1,180万円
7級7号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの419万円1,000万円
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの419万円1,000万円
8級4号1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの331万円830万円
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの331万円830万円
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの331万円830万円
9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの249万円690万円
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの249万円690万円
10級7号1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの190万円550万円
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの190万円550万円
10級11号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの190万円550万円
11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの136万円420万円
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの94万円290万円
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの94万円290万円
12級10号1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの94万円290万円
12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの94万円290万円
13級6号1手のこ指の用を廃したもの57万円180万円
13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの57万円180万円
14級7号1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの32万円110万円
14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの32万円110万円

運動障害

頚部や胸腰部が強直したり、動く範囲(可動域)が狭くなった場合の後遺障害をいいます。

等級内容自賠責基準弁護士基準
6級5号脊柱に著しい運動障害を残すもの512万円1,180万円
8級2号脊柱に運動障害を残すもの331万円830万円

欠損障害

欠損障害は、身体の特定部位の一部または全部を失った場合をいいます。どの部位をどの程度失ったかにより、後遺障害慰謝料の額が変わります。欠損障害は以下の表で示すとおり多数ありますが、骨折の場合には上肢、下肢、手、足、指そのものを失うということは少なく、骨が欠損するにとどまることが多いことから、実際のケースでは13級7号や14級6号の指骨の1部喪失といった後遺障害がしばしば問題になります。

等級内容自賠責基準弁護士基準
1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの1,150万円2,800万円
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの1,150万円2,800万円
2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの998万円2,370万円
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの998万円2,370万円
3級5号両手の手指の全部を失ったもの861万円1,990万円
4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの737万円1,670万円
4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの737万円1,670万円
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの737万円1,670万円
5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの618万円1,400万円
5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの618万円1,400万円
5級8号両足の足指の全部を失ったもの618万円1,400万円
6級8号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの512万円1,180万円
7級6号1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの419万円1,000万円
7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの419万円1,000万円
8級3号1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの331万円830万円
8級10号1足の足指の全部を失ったもの331万円830万円
9級12号1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの249万円690万円
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの249万円690万円
10級9号1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの190万円550万円
11級8号1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの136万円420万円
12級9号1手のこ指を失ったもの94万円290万円
12級11号1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの94万円290万円
13級7号1手のおや指の指骨の1部を失ったもの57万円180万円
13級9号1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの57万円180万円
14級6号1手のおや指以外の手指の指骨の1部を失ったもの32万円110万円

短縮障害

短縮障害は、骨折等の受傷によって下肢の一方の長さが短縮し、身体の左右のバランスに問題が起きることで日常生活等の動作に支障が生じる後遺障害を言います。また、骨折等の受傷によって下肢の一方の成長が過剰に生じ、他方の下肢よりも長くなってしまった場合にも、短縮した場合と同様の問題が起きますので、後遺障害として認められます。
上前腸骨棘(骨盤の出っ張った部分)と下腿内果下端(内くるぶしの下の部分)の間の長さを健側(受傷していない方の下肢)と比較することで等級を判断します。

等級内容自賠責基準弁護士基準
8級5号1下肢を5センチメートル以上短縮したもの331万円830万円
8級相当1下肢が5センチメートル以上長くなったもの331万円830万円
10級8号1下肢を3センチメートル以上短縮したもの190万円550万円
10級相当1下肢が3センチメートル以上長くなったもの190万円550万円
13級8号1下肢を1センチメートル以上短縮したもの57万円180万円
13級相当1下肢が1センチメートル以上長くなったもの57万円180万円

変形障害

変形障害は、骨折等の受傷によって、脊柱や長管骨に変形を残したり、上下肢に偽関節が残った場合の後遺障害を言います。変形の程度や運動障害の程度等により等級が決まります。また、その他の体幹骨(鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨)に著しい変形を残す場合にも、12級5号として変形障害が認定されます。

等級内容任意保険基準弁護士基準
6級5号脊柱に著しい変形を残すもの512万円1,180万円
7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの419万円1,000万円
7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの419万円1,000万円
8級8号1上肢に偽関節を残すもの331万円830万円
8級9号1下肢に偽関節を残すもの331万円830万円
11級7号脊柱に変形を残すもの136万円420万円
12級8号長管骨に変形を残すもの94万円290万円

骨折の慰謝料に関する注意点

リハビリの費用は認められる?

リハビリが治癒前または症状固定前に行なわれたものである場合は、リハビリの費用も認められます。他方、完治後または症状固定後に行なわれたリハビリの費用は通常は認められません。
完治とは、文字通り治療によって症状が治った状態をいいます。当然ですが、症状が治ればそれ以上治療する必要性はないため、治療費は請求できません。
これに対し、症状固定とは、症状は残ったもののそれ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態を指します。症状固定に至っているかどうかについては、医師の判断が尊重されます。症状固定に至った日を症状固定日といいますが、治療費は症状固定日までのものしか通常認められません。そのため、症状固定日後も受傷部位の痛みが続く場合には、リハビリ費用を自費負担するほかありません。
症状固定日後も痛みが続くようであれば、後遺障害等級認定の手続きを行なうことを検討しましょう。

ギプスで自宅安静していた期間はどう扱われる?

たとえば足を骨折してギプスを装着した場合、歩くことすらできず自宅で安静にせざるを得ないことがあります。この場合、症状が重症であるなどの事情によっては、自宅待機期間を入院期間とみることがあります。これにより、自宅待機期間中に通院していなかったとしても、入院分の慰謝料を請求することができます。自宅待機期間を入院期間とみることができるかどうかは、医師から安静にするよう指示があったかなどの事情が重要になります。
また、ギプスで自宅安静していた場合に、保険会社から、通院期間が長期にわたるのに対して通院頻度が少ないことなどを理由に低額な慰謝料を提示されることがあります。しかし、骨折した場合はむち打ちなどの場合に比べて通院頻度は多くならないのが通常ですから、通院頻度が少ないことは必ずしも慰謝料を減額される要素になるとは限りません。そのため、保険会社との間で交渉を行なうべきです。
このように保険会社から不当に低額な賠償額の提示を受けた場合は、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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